PFAS（有機フッ素化合物）とは？ 主な使用用途や健康への影響も合わせて解説

PFAS（有機フッ素化合物）とは、有機フッ素化合物（ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物）を総称したものです。

PFASは、主に防水・防油性を持つ特性から撥水加工や消火剤、食品包装材などに幅広く使用されており、人々の生活を便利にするために普及してきました。

しかし、近年ではPFASの健康への影響が懸念されるようになり、日本国内だけでなく世界中で重要な環境問題として認識されています。

本記事では、PFASの詳細や使用用途、健康への影響を詳しく解説します。PFASを詳しく知りたい方や健康への影響を気にしている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。

PFASとは

PFASとは、有機フッ素化合物を総称したものです。PFASは、放置していても自然に分解されにくいため「永遠の化学物質」フォーエーバーケミカルとも呼ばれます。

PFASは、主に防水・防油性を持つ特性から撥水加工や消火剤、食品包装材などに幅広く使用されています。

近年では、PFASの健康や環境への影響が懸念されており、特に肝機能障害や免疫系への影響、発がん性などが指摘されるようになりました。そのため、各国で規制が進められ、代替物質の開発も活発化しています。

PFASの除去や処理方法は、持続可能な社会を目指す上で重要な課題として、世界中で取り上げられているのが現状です。

PFOSとPFASの関係

PFOSとは、ペルフルオロオクタンスルホン酸と呼ばれる物質です。PFASと同様に、防水性や耐熱性があるため、消火剤や撥水加工された製品などに使用されています。

PFOSとPFASの性質や特徴は似ていますが、明確な違いを挙げるとすれば、物質の概念です。

PFAS（ペルフルオロアルキル物質）は、PFOSを含む、その他約10,000種類の化学物質の総称を指します。要するに、PFOSはPFASの中の特定の1つの物質であり、PFASは化学物質の広範なグループを表しています。

PFOAとPFASの関係

PFOAとは、ペルフルオロオクタン酸と呼ばれる物質です。PFOAもPFASと同様に防水性や耐熱性があるため、撥水・撥油加工、消火剤などに使用されてきました。

また、PFOSと同様に、PFOAもPFASの中の特定の1つの物質です。

PFASの主な使用用途

本章では、PFASの主な使用用途を解説します。

主に、生活用品や産業・工業で使用されているケースがほとんどです。

• 生活用品に使用されているケース
• 産業・工業で使用されているケース

具体例とともに、それぞれを詳しく見ていきましょう。

生活用品に使用されているケース

実は、生活用品の多くにはPFASが使用されており、我々の暮らしの利便性を高めてくれています。以下、PFASが使用されている生活用品の具体例です。

補足として、近年ではPFASの健康や環境への影響に対する懸念が高まり、多くの企業で代替物質を探す動きが進んでいるため、全ての製品で使用が続いているわけではありません。

産業・工業で使用されているケース

PFASは、生活用品以外に、産業や工業で使用されています。一部の具体例を見ていきましょう。

PFASの健康への影響は？

本章では、PFASの健康への影響を詳しく解説します。

近年では、深刻な環境問題と取り上げられているため、欧米や日本国内で取り扱いに関する規制が厳しくなっています。

• ガンのリスク増加
• 免疫系への影響
• 内分泌系への影響

それでは、詳しく見ていきましょう。

ガンのリスク増加

PFASの一部には、ガンとの関連が研究で示されているものが存在します。

PFASは、長期的に接触することで体内に蓄積しやすく、細胞の変異や異常を引き起こす可能性があります。

2023年には、WHOの国際がん研究機関がPFOAに発がん性があると発表しました。人のガンに対する十分な根拠があると発表しているため、体内への蓄積はガンのリスク増加の危険性があることは間違いないでしょう。

参照：WHO

免疫系への影響

PFASの一部には、免疫系に対しても悪影響を及ぼす可能性が高いものが存在します。

特に、子どもの感染症に対する抵抗力が弱まることが懸念されています。当然、免疫系が正常に機能しない場合は、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなることが考えられます。

また、PFASは免疫細胞の生成や機能に干渉する可能性があり、結果的に全体的な健康に悪影響を及ぼすでしょう。

内分泌系への影響

PFASの一部には、内分泌かく乱物質として知られ、ホルモンのバランスに悪影響を与える可能性があるものが存在します。

例えば、PFASは甲状腺ホルモンの調整に干渉し、代謝の変化や体重増加につながると報告されているため、注意しなければなりません。

また、妊婦がPFASを体内に取り込んでしまうと、胎児の発育や生殖機能にも影響を及ぼす可能性が高いです。内分泌系への影響は、長期的な健康リスクを引き起こす可能性があり、特に成長期の子どもや妊婦にとって重要な懸念事項となっています。

参照：内分泌かく乱化学物質と甲状腺

PFASをどこから摂取してしまうのか

本章では、PFASの摂取経路を詳しく解説します。

PFASは、主に水道水と食品からの摂取が考えられます。PFASを摂取しないようにするためには、PFASを含んでいる物質を知っておくべきです。

• 水道水から
• 食品から

知らないうちに摂取してしまうことがないように、事前に確認しておきましょう。

水道水から

PFASが水道水に含まれるようになった背景としては、さまざまな製品の製造過程で、PFASが排水や廃棄物として放出されるようになったためです。

放出されたPFASは、土壌や雨水などを通じて地下水や河川に浸透してしまいます。その後、浄水処理を行っても完全に分解されないPFASが、普段使用している水道水に含まれてしまうのです。

そのため、自宅で水道水を飲んだり調理に使用したりしていると、知らないうちに摂取してしまっている可能性が高いといえます。

特に、PFASの濃度が高い地域では、長期的な摂取により健康リスクを高める可能性があります。多くの国や地域で水質検査が行われていますが、基準値を超える場合は特別な浄水処理が必要です。

食品から

PFASは、食品から摂取してしまう場合も多いです。

PFASに汚染された土壌で育てられた農作物は、PFASを微量に含んでいるケースがあります。そのため、汚染された土壌で育てられた野菜や米を食べて、体内に摂取してしまう可能性があります。

水道水のように直接的ではなく、間接的に摂取してしまう危険性があるため、注意している場合でも知らない間に体内に蓄積しているかもしれません。

また「撥水加工のフライパンを使用すると摂取してしまうのではないか」のような懸念もあります。しかし、製造段階のみでPFASを使用するため「調理の際にフライパンを使用したから体内へ取り込まれるかも」のような心配はいりません。

水からPFASを除去する方法

本章では、水からPFASを除去する方法を解説します。

PFASは、そのまま放置しても消滅はしませんが、専門的な水処理方法で除去できます。

• イオン交換
• RO膜処理
• 粒状活性炭

除去方法が気になる方は、最後まで読んでみてください。

イオン交換

PFASを除去する方法の1つに、イオン交換をする方法があります。

イオン交換とは、水中の特定のイオン交換によって、不純物を除去する方法です。イオン交換樹脂を使用して、PFASを効果的に吸着して除去します。

イオン交換技術は、水のpHや温度に影響を受けにくく、高い除去効率を持っていることが特徴です。しかし、イオン交換樹脂の定期的な再生や交換が必要であるため、運用コストがやや高くなる上に、メンテナンスも必要になるデメリットがあります。

RO膜処理

逆浸透（RO）膜処理は、水を高圧で半透膜を通過させることで、不純物や溶解した物質を除去する方法です。

逆浸透（RO）膜処理に使用される膜は、非常に細かく、PFASのような小さな分子も除去できる能力があります。RO膜処理は、高い精度で水を浄化できるため、飲料水の安全性を確保するために広く用いられています。

ただし、膜が詰まることがあるため、定期的なメンテナンスが必要で運用コストが高いです。

粒状活性炭

粒状活性炭を用いた除去は、PFASを物理的に吸着して除去する方法です。

活性炭は、主に水質浄化や空気清浄の際に使用します。PFASなどの有害な化学物質を吸着する能力がある理由は、大きな比表面積を持つためです。

粒状活性炭による除去は、水が活性炭を通過する際にPFASを吸着して除去します。粒状活性炭の再生をすれば比較的コストを押さえて除去できるため、家庭用フィルターや大規模な水処理施設で広く使用されています。

日本の水道水のPFASは大丈夫？

最後に、日本の水道水の安全性を解説します。

• 浄水器を使用した方がいい？
• 煮沸消毒で除去できる？

それでは、詳しく見ていきましょう。

浄水器を使用した方がいい？

日本では、近年PFASの環境問題に関する意識が高まっているため、水質検査を慎重に行うようになってきました。

環境省の調査によると、令和元年から令和4年度までの公共用水域および地下水における水質観測地点（2735地点）のうち、基準値を超過した地点数は250地点あると発表されました。

都心部での基準値超過が多く見られたため、東京・大阪などに住んでいる方は注意する必要があるでしょう。

また、活性炭フィルターを用いた浄水器は、約7〜8割の不純物を除去できるという研究結果も出ているため、不安な方は使用するのがおすすめです。

煮沸消毒で除去できる？

煮沸消毒は、一般的に細菌やウイルスを殺すための効果的な方法ですが、PFASは除去できません。

PFASを完全に除去するためには、上記で紹介したイオン交換や逆浸透膜処理、粒状活性炭などの専門的な水処理技術を用いる必要があります。

PFASの除去を目的とする場合、煮沸消毒は適切な方法ではないと覚えておきましょう。

まとめ｜PFASの健康被害を認識しておこう！

本記事では、PFASの概要と健康への影響をテーマに解説しました。

PFASは、防水性や耐熱性に優れているため、活用方法が幅広く、私たちの生活用品の多くに使用されている化合物です。

しかし、近年はPFASの人体への影響が明らかになってきています。具体的には、ガンのリスク増加や免疫系への影響、内分泌系への影響などが挙げられます。

さらに、PFASは自然消滅しないうえに、煮沸消毒では除去できないため、専門的な水処理技術が必要です。

今後、日本国内でもPFASの基準値が改定されたり、多くの規制がかかることが予想されます。PFASに対する適切な知識を身に着けて、自分自身の健康を守りましょう。