PFASを含む泡消火剤には注意しなければならない!保管方法や人体への影響も解説

PFAS(有機フッ素化合物)とは、有機フッ素化合物(ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物)を総称したものです。

2010年に化学物質の審査及び規制に関する法律(化審法)により、PFAS(PFOS)が指定されました。そのため、PFAS(PFOS)を含む泡消火剤の処分や交換が進められています。

本記事では、PFASを含む泡消火剤の対象品番や保管方法、PFASが人体に及ぼす影響などを解説します。

泡消火剤の処分にお悩みの方や、PFASについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

PFAS(有機フッ素化合物)とは

PFAS(有機フッ素化合物)とは

本章では、そもそもPFASとは何か詳しく解説します。

  1. そもそもPFASとは何か?
  2. PFASの使用用途
  3. PFASの環境への影響

使用用途や環境への影響を詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

そもそもPFASとは何か?

PFAS(有機フッ素化合物)とは、有機フッ素化合物(ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物)を総称したものです。

PFASは安定した化合物で、環境中に長期間残留するため、永遠の化学物質(フォーエバーケミカル)とも呼ばれています。そのため、飲料水や土壌、食品中にPFASが存在して、健康への影響も懸念されている化合物です。

略称

読み方

正式名称

PFAS

ピーファス

ペルフルオロアルキル化合物

PFOS

ピーフォス

ペルフルオロオクタンスルホン酸

PFOA

ピーフォア

ペルフルオロオクタン酸

PFHxS

ピーエフヘキサエス

ペルフルオロヘキサンスルホン酸

また、PFASは撥水性や撥油性に優れているため、主に防水加工や耐油加工、消火剤などに幅広く使用されています。しかし、放置していても環境中に残留するため、除去方法や取り扱いの規制が世界的に進んでいます。

PFASの使用用途

PFASは、撥水性や撥油性に優れているため、さまざまな製品に使用されています。具体的には、以下の通りです。

  • 消火剤:油火や化学火災用の泡消火剤
  • テフロン加工製品:フライパンや鍋などの調理器具
  • 防水衣料:雨具、アウトドアウェア
  • 化粧品:ファンデーション、日焼け止め

具体例には、PFASが含まれているすべての製品を記載しているわけではありませんが、多くの日用品に使用されていることがわかります。

また、消火剤にも使用されており、非常事態に有効な製品にも活用されているため、我々の日常を支えているといっても過言ではありません。

PFASの環境への影響

近年、PFASは環境への影響が懸念されるようになりました。理由としては、PFAS(PFOA、PFOS)の摂取による人体への影響があるとWHO(世界保健機関)より発表されたからです。

PFASを取り扱う工場からの工業廃水が、河川に流れ出たり、地下水に浸透したりするため、農作物を育てる土壌に影響をおよぼします。

また、水道水は河川の水や地下水の再利用がほとんどです。しかし、水道水として利用する際に、浄水してもPFASは完全に除去できません。結果的に、PFASが含まれた水道水を利用してしまい、人体へ取り込まれてしまいます。

参照:WHO

泡消火剤とは?

本章では、泡消火剤を詳しく解説します。

  1. 泡消火剤の使用例
  2. 泡消火剤の成分

近年、PFASの規制で話題になっている、泡消火剤の使用例や成分を詳しく見ていきましょう。

泡消火剤の使用例

泡消火剤の代表的な使用例は、以下の通りです。

  • 航空機の消火
  • 工業施設
  • 車両火災
  • 倉庫や貯蔵施設

主に、空港や航空機、大規模な工場施設などの消火に使用されます。水での消火では、逆に火が大きくなってしまったり、消火できなかったりする場所の火災に有効活用されています。

泡消火剤の成分

泡消火剤の成分は主に以下の通りです。

  • 界面活性剤
  • 発泡剤
  • 添加剤
  • 防腐剤

成分中の添加剤には、環境問題に影響を与えるPFAS(PFOA)が含まれているため、近年では、PFAS(PFOA)が含まれていない消火剤への交換が進められています。

現在はPFOAを含む泡消火剤の規制が進んでいる

2021年には日本国内でも、PFOAを含む製品の製造および輸入の許可制、使用の制限等の措置を講じるようになりました。

PFOAの規制を本記事で取り上げている理由は、2010年4月にPFOSの規制が発表されて、代替品としてPFOAを含む製品の使用が広まったからです。

そのため、一度PFOSの規制で泡消火剤を交換した場合でも、PFOAを含む泡消火剤を使用している場合には注意が必要です。

引用:環境省|PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する 技術的留意事項

PFOAとは?

PFOAとは?

本章では、PFOAの概要を詳しく解説します。

PFOAの規制が進んでいることを解説しましたが、具体的なPFOAの特徴や使用されている製品も見ていきましょう。

  1. PFASとPFOAの関連性
  2. PFOAの特徴
  3. PFOAは何に使用されているのか

PFOAを詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

PFASとPFOAの関連性

PFASとPFOAの関係性としては、PFASが広範な化合物の総称を意味するものであり、PFASの中の一種にPFOAが存在している認識です。

PFASは、さまざまな化合物が含まれていますが、PFOS同様にPFOAも近年規制が強化された物質であるため、人体への健康への懸念も特に問題視されています。

PFOAの特徴

PFOAの特徴としては、耐水性や耐油性に優れている点です。

そのため、さまざまな日用品に活用されています。具体例としては、撥水性を兼ね備えたレインコートやアウトドアウェア、撥油性がある鍋やフライパンなどが挙げられます。

また、PFASと同様に自然界での分解がされにくい特徴があるため、特殊な除去方法で処理しないと完全に消えない化合物です。

PFOAは何に使用されているのか

PFOAが何に使用されているのか気になる方も多いと思います。

以下に、具体例を挙げて解説していきます。

  • テフロン加工製品:フライパンや鍋
  • 消火剤:主に泡消火剤
  • 食品包装材:お菓子の袋(油や水をはじく特性を活かした包装など)
  • 防水加工:アウトドアウェアやレインコート

PFOAはPFASの一種であるため、使用されている製品にあまり違いはありません。

PFOAを含む泡消火剤について

PFOAを含む泡消火剤について

本章では、PFOAを含む泡消火剤について解説します。

規制が強化されているため、PFOAを含む泡消火剤の取り扱いには注意が必要で、対象となる品番や保管方法の解説を詳しくしていきます。

  1. PFOAを含む泡消火剤の対象品番
  2. PFOAを含む泡消火剤の保管方法
  3. PFOAを含む泡消火剤はどれくらい残っている?

泡消火剤を取り扱っている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

PFOAを含む泡消火剤の対象品番

PFOAを含む泡消火剤の対象品番は、一般社団法人日本消火器工業会が公表しています。

以下の表は一部抜粋したものになります。

製造者

消火器型式番号

薬剤型式番号

消火器の種類 

薬剤量

製品名

日本ドライケミカル(株)

消第23~160号

薬第22~2号

強化液(中性)消火器

2L

LS-2N(Ⅲ)

日本ドライケミカル(株)

消第24~37号 

薬第24~2号

強化液(中性)消火器

2L

LS-2ND(Ⅲ)

日本ドライケミカル(株)

消第26~15号

薬第24~2号

強化液(中性)消火器 

2L

LS-2ND(Ⅳ)

㈱初田製作所

消第17~22号 

薬第17~4号

強化液(中性)消火器

2L

TRE-2SX

㈱初田製作所

消第17~23号

薬第17~4号

強化液(中性)消火器

3L

TRE-3SX

㈱初田製作所

消第20~5号

薬第17~4号

強化液(中性)消火器 

6L

TRE-6SX

引用:PFOA含有消火器廃棄処理対象品一覧表

PFOAを含む泡消火剤の保管方法

PFOAを含む泡消火剤の保管方法は、化学物質の審査及び規制に関する法律(化審法)に基づいて定められています。

具体的な保管方法は、以下の通りです。

  • 周囲に囲いが設けられていること。
  • 見やすい箇所に次に掲げる要件を備えた掲示板が設けられていること。
  • 保管の場所からPFOS含有廃棄物又はPFOA含有廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないよう適切な措置を講ずること。
  • ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないようにすること。
  • PFOS含有廃棄物又はPFOA含有廃棄物に他の物が混入するおそれがないように仕切りを設ける等必要な措置を講ずること。

引用:PFOS及びPFOA含有廃棄物の処理に関する 技術的留意事項

また、保管容器に関する決まりも定められており、密閉できること、損傷しにくいことなど、安全に保管するための項目がいくつかあります。

PFOAを含む泡消火剤はどれくらい残っている?

PFOAを含む泡消火剤の調査は、関係団体などが4年に1度在庫量の調査を行っています。

2020年度の調査では、全国合計の泡消火薬剤量は338.8万L、泡消火薬剤中のPFOS含有量は全国合計17.82tとなっています。

PFOS、PFOAは、化学物質審査規制法の対象になり、製造・輸入の規制にから数年経ちますが、泡消火剤の交換費用の負担なども懸念されており、スムーズに交換が進んでいない業種もあるようです。

引用:環境省PFOSを含有する消火器・泡消火薬剤等の取扱い及び処理について | 保健・化学物質対策 

PFOAの摂取による人体への影響

PFOAの摂取による人体への影響

本章では、PFOAの摂取による人体への影響を解説します。

  1. PFOAの摂取で想定される人体への影響
  2. PFOAの摂取経路は?

自然に分解されず、体内に蓄積されてしまうPFOAには、どのような悪影響があるのか詳しく見ていきましょう。

PFOAの摂取で想定される人体への影響

現在、日本ではPFOAの摂取による人体への健康被害の事例は発表されていません。

しかし、世界保健機関(WHO)のがん機関である国際がん研究機関(IARC)は、PFOAは人に対して発がん性があると公表しました。

PFOAに関しては、免疫抑制および発がん物質の主要な特徴があると、明確な証拠とともに公表しています。

また、日本でも水道水中のPFOA、PFOSの含有量に対して規制が強化されました。(PFOA、PFOSの合算値で50ng/L)しかし、日本各地では基準値を大幅に超える、水質検査結果が出ていることも事実です。

人体への影響が公表されているため、PFOA、PFOSの処理方法や環境汚染の対策を進めていかなければなりません。

参照:WHO

PFOAの摂取経路は?

PFOAの摂取経路は、主に水道水と農作物です。

原因としては、工業廃水による環境汚染です。PFOAを使用する工場からの、工業廃水は、河川や地下水に浸透して、やがて農作物を育てる土壌を汚染します。

そして、PFOAを含んだ水で育った農作物を食べることで、人間の体内にPFOAが蓄積します。

また、河川や地下水を浄水して水道水にする際も、PFOA等は分解されないため、家庭の水道水中にも残留してしまうことが多いです。

「知らず知らずのうちに、摂取してしまっている」ことがほとんどで、日常生活を送るうえで、水道水の利用を避けることはできません。そのため、PFOA等の除去方法の改善や、規制強化などで根本的な環境問題を解決する必要があります。

水道水のPFAS・PFOAの含有量の基準

水道水のPFAS・PFOAの含有量の基準ですが、厚生労働省により、暫定目標値として PFOS および PFOA の合計値 50 ng/L 以下と定められました。

しかし、環境省は数年連続で基準値を超える値が検出されているため、基準値の引き上げの検討も公表しています。今後は、さらに規制が強化されて、国内全体で環境問題への取り組みに力を入れるようになりそうです。

参照:環境省|PFAS の概況と今後の対応

PFOAを含む泡消火剤の取り扱いには注意が必要

本記事では、PFAS(PFOA.PFOS)の特徴や、PFOAを含む泡消火剤について解説してきました。

PFOAは、発がん性が公表されているため、PFOAを含む泡消火剤の処分や交換が進められています。また、私たちの日常生活にもPFOAは潜んでいるため、水道水や農作物から摂取してしまうことも解説しました。

今後、国内の規制や環境汚染に対する意識改革を行っていく必要があります。

PFOA、PFOSを除去したい業者や、処分に困っている方は、ぜひ太陽油化へのお問い合わせください。

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