PFASはなぜ問題視されるようになったのか?除去方法3選も詳しく解説

近年、日本国内でもPFASの環境汚染が問題視されてきました。

問題視されるようになった理由としては、PFASの摂取による人体への影響が公表され始めたからです。PFASは、ガンリスクの増加やホルモンバランスの乱れなど、さまざまな人体への影響を及ぼす研究結果が出ています。

また、PFASは放置していても自然に分解されない「永遠の化合物質」と呼ばれ、適切な除去を行わない限り自然界に残り続けるのが特徴です。

本記事では、PFASが問題視されるようになった詳しい背景や、除去方法を詳しく解説します。ぜひ最後まで読んでみてください。

PFAS(有機フッ素化合物)とは

PFAS(有機フッ素化合物)とは

PFAS(有機フッ素化合物)とは、有機フッ素化合物(ペルフルオロアルキル化合物・ポリフルオロアルキル化合物)を総称したものです。PFASは、放置していても自然に分解されにくいため「永遠の化学物質」フォーエーバーケミカルとも呼ばれます。

本章では、PFASの種類や主な使用用途を解説します。

  1. PFASの種類
  2. PFASの主な使用用途

PFASの概要を詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

PFASの種類

PFASは、非常に多くの種類があるとされており、その中でも主に問題になっているのが、下記の3種類です。

  • PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)
  • PFOA(ペルフルオロオクタン酸)
  • PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)

引用:対象物質等一覧(METI/経済産業省)

上記の3種類は、近年日本でも規制が強化されてきました。どちらも似たような性質を持っており、撥水性や撥油性、耐火性に優れています。

略称

読み方

正式名称

PFAS

ピーファス

ペルフルオロアルキル化合物

PFOS

ピーフォス

ペルフルオロオクタンスルホン酸

PFOA

ピーフォア

ペルフルオロオクタン酸

PFHxS

ピーエフヘキサエス

ペルフルオロヘキサンスルホン酸

そのため、我々の日常生活のいたるところで活用されており、私たちは日々PFASを含んだ製品を利用しています。

PFASの主な使用用途

PFASの主な使用用途は、以下の通りです。

  • 泡消火剤
  • 撥水・防油加工
  • 食品包装材料
  • 化粧品
  • 半導体
  • 界面活性剤
  • フッ素樹脂の製造

上記の製品は、PFASの撥水性や耐火性などが活かされています。しかし、近年ではPFASの環境汚染が懸念されているため、製造や使用が禁止されている製品もあります。

PFASが問題視されるようになった背景

PFASが問題視されるようになった背景

本章では、PFASが問題視されるようになった背景を解説します。

  1. PFASの広範な使用
  2. 健康リスクの増大と研究の進展
  3. PFAS規制の変化

PFASの広範な使用

PFASは、撥水性や耐熱性に優れているため、多様な産業で幅広く利用されるようになりました。

そのため、私たちの日常生活の多くの場面で使用されており、主に撥水性を利用した防水ジャケットや調理器具、耐熱性を利用した泡消火剤などが挙げられます。

しかし、多様な産業での使用により、PFASが環境中に広がってしまったため、土壌や水源への影響が懸念されるようになりました。特に、PFASは分解されにくいため、環境中に蓄積し続ける性質があり、近年では持続的な環境問題として取り上げられています。

健康リスクの増大と研究の進展

PFASが健康に与える影響に関する研究が進展する中で、さまざまな健康リスクが指摘されています。PFASの中でも、PFOA、PFOSは発がん性があると公表がされています。

参考:WHO

PFASの主な摂取経路としては、まずPFASを含む工業廃水が河川や地下水に浸透します。そして、水道水の原水として河川水や地下水が利用されるため、結果的に人体に取り込まれてしまうケースがほとんどです。

水質汚染は深刻な問題として認識されています。今後は、日本国内でもさらにPFASに対する研究や規制強化が進むと考えられています。

PFAS規制の変化

PFASは、人体への影響や、自然に分解されにくい性質を持つため、世界的に規制が強化されています。

日本国内では、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)によって、PFOS(2010年4月〜施行)とPFOA(2021年10月〜施行)の製造や輸入が禁止されました。

また、水道水中のPFOS、PFOAの含有量の規制もされています。現状、日本では厚生労働省によってPFOS、PFOAの合算値が 50 ng/L 以下と定められました。

PFASが問題視される背景には、広範な使用、健康リスクの認識、そして規制内容の変化が大きく関わっています。

参考:環境省|PFAS の概況と今後の対応

PFASの除去方法3選

PFASの除去方法3選

本章では、PFASの除去方法3選を解説します。

PFASは、これから解説する特別な除去方法で処理しない限り、環境中に残留し続けます。

  1. 逆浸透膜
  2. イオン交換
  3. 吸着除去

PFASの除去を検討されている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

逆浸透膜

逆浸透(RO)膜処理は、特に水処理において広く使用される技術です。水を高圧で半透膜を通過させて、不純物や溶解した物質を除去する方法になります。

逆浸透(RO)膜処理に使用される膜は、分子サイズが非常に小さいPFASを効果的にフィルターする能力が高いです。RO膜処理は、高い精度で水を浄化できるため、飲料水の安全性を確保するために広く用いられています。

逆浸透膜処理は、家庭用浄水器から工業用の大規模な水処理施設まで、さまざまな用途で利用されています。

除去率が高い特徴がある一方で、膜の目詰まりや劣化が起こるため、定期的なメンテナンスが必要になり運用コストが高いのが特徴です。

イオン交換

イオン交換は、特定のイオンを含む樹脂を使用してPFASを除去する方法です。

PFASを含む水にイオン交換樹脂を加え、PFASのイオンを樹脂に吸着させて、他の無害なイオンと交換します。

イオン交換技術は、水のpHや温度に影響を受けにくく、高い除去効率を持っていることが特徴です。しかし、イオン交換樹脂の定期的な再生や交換が必要であるため、運用コストがやや高くなる上に、メンテナンスも必要になるデメリットがあります。

吸着除去

吸着除去は、活性炭などの吸着剤を使用して水中のPFASを取り除く方法です。

活性炭は、多孔質な構造により、大量のPFASを効率的に吸着する能力があります。水が活性炭の層を通過する際、PFASが炭の表面に付着し、浄水される仕組みです。

吸着除去は、比較的簡単に導入できるため、家庭用フィルターや大規模な水処理施設で広く使用されています。また、粒状活性炭の再生をすれば比較的コストを押さえて除去できる点も強みです。

PFASのサンプリングから分析までに注意するポイント3選

PFASのサンプリングから分析までに注意するポイント3選

本章では、PFASのサンプリングから分析までに注意するポイントをご紹介します。

  1. 分析の目的によって必要な検出下限値が変わってくる
  2. 分析対象となる試料の種類(土壌、水など)によってサンプリング条件が変わってくる
  3. 採取器具(容器等)の付着物によって分析結果に影響を与える可能性がある

PFASのサンプリングを考えている方や、分析したい方はぜひ参考にしてください。

分析の目的によって必要な検出下限値が変わってくる

PFASの分析は、目的に応じて異なる検出下限値が求められます。

例えば、環境モニタリングや規制遵守のための分析では、比較的低い濃度が求められます。一方で、スクリーニング目的の場合は、やや高い検出濃度でも許容される場合が多いです。

分析の目的を明確にして、必要な方法や機器や試薬を適切に選定し、結果の信頼性を高められるようにしましょう。

分析対象となる試料の種類(土壌、水など)によってサンプリング条件が変わってくる

試料の種類(土壌、水など)によって、サンプリングの手法や条件が大きく異なります。

例えば、水の場合、流量や採取時の温度、pHなどが影響するため、安定した条件での採取が求められます。一方、土壌サンプルでは、深さや採取位置や周囲の環境の影響を考慮しなければなりません。

さらに、異なる試料間でのPFASの分布も考慮するようにしましょう。検査する際には、必ずサンプリング条件を確認するようにしてください。

採取器具(容器等)の付着物によって、分析結果に影響を与える可能性がある

PFASは安定した化合物であり、外部からの付着物や器具の汚染が分析結果に影響を与えることがあります。

例えば、採取に使用する容器や器具がPFASに汚染されていると、試料中の実際の濃度を正確に測定できません。そのため、PFASに対して無害な材質の器具を使用し、事前に十分な洗浄を行う必要があります。

また、サンプリング前後での器具の管理や、適切な保管条件も考慮するようにしましょう。

PFASの処理業者を選ぶポイント3選

PFASの処理業者を選ぶポイント3選

本章では、PFASの処理業者を選ぶポイントを解説します。

PFASの収集運搬業者や処分業者を選ぶ際には、しっかりとした実績があるか確認するようにしましょう。他にも、ポイントがいくつかあるため、気になる方はぜひ読んでみてください。

  1. PFAS含有物等の現地回収から搬入までの処理実績が豊富である
  2. 荷姿、数量、保管状況などの現場条件を元に安全で最適な対応や提案ができる
  3. 焼却温度が1000℃以上で対応が可能な処理施設を有している

PFAS含有物等の現地回収から搬入までの処理実績が豊富である

PFASは環境中で非常に安定し、取り扱いに特別な注意が必要な物質です。

収集運搬業者がPFAS含有物の回収や搬入に関する豊富な処理実績を持っている点は、信頼性のある処理業者を選ぶ際に重要なポイントになります。

ホームページから実績等を確認して、適切な処理業者を選ぶようにしましょう。

荷姿、数量、保管状況などの現場条件を元に安全で最適な対応や提案ができる

PFASを含む廃棄物の収集・運搬では、荷姿や数量、保管状況など、さまざまな現場条件が考慮されます。

処理・運搬業者がPFASの情報を元に安全かつ適切な対応や、提案を行えるかどうかは、廃棄物が安全に処理されるかに大きく影響します。

処理・運搬業者を選ぶ基準として、必要な保護具や搬送方法の選定が正しいか、廃棄物の種類に応じた法令遵守などがしっかり守られているかを確認するようにしましょう。

焼却温度が1000℃以上で対応が可能な処理施設を有している

PFASは、焼却処理で分解されるものの、十分な焼却温度が必要です。

特に、PFOSは850℃以上、PFOAは1000℃以上(1100℃以上を推奨)の温度での処理が推奨されています。そのため、処分業者が1000℃以上の焼却温度を実現できる処理施設を有しているか確認するようにしましょう。

今後は、PFAS規制がさらに強化されることが予想できるため、早い段階で信頼性のある業者を見つけておく必要があります。

PFASを摂取するとどのような被害がある?

PFASを摂取するとどのような被害がある?

本章では、PFASを摂取するとどのような健康被害があるのか解説します。

  1. がんリスクの増加
  2. ホルモンバランスの乱れ

PFASを摂取すると、主に2つの影響があるとされているため、1つずつ詳しく見ていきましょう。

がんリスクの増加

PFASは、ガンとの関連が研究で示されています。

PFASは、特にPFOAやPFOSなどの特定の化合物が発がん性のリスクを高める可能性があるとされています。PFASは、長期的に接触して体内に蓄積しやすく、細胞の変異や異常を引き起こす可能性が高いです。

世界保健機関(WHO)のがん機関である国際がん研究機関(IARC)が、人のガンに対する十分な根拠があると発表しているため、体内への蓄積はガンのリスク増加の危険性があることは間違いないでしょう。

参考:WHO

ホルモンバランスの乱れ

PFASは内分泌かく乱物質として知られ、PFOAやPFOSなどの化合物はホルモンの合成や働きに干渉し、主に甲状腺ホルモンに影響を与える可能性があります。そのため、代謝の変化や体重増加につながると報告されているため、注意が必要でしょう。

また、妊婦がPFASを体内に取り込んでしまうと、胎児の発育や生殖機能にも影響を及ぼす可能性が高いです。具体的には、胎盤を通過することや乳汁中に出ることが証明されています。

内分泌系への影響は、特に成長期の子どもや妊婦にとって長期的な健康リスクを引き起こす可能性があります。

参考:内分泌かく乱化学物質と甲状腺

PFASの分析・除去は専門業者に依頼しよう

本記事では、PFASが問題視されるようになった背景や、除去方法などを詳しく解説しました。

PFASは、ガンリスクの増加やホルモンバランスの乱れなど、人体への影響が公表されてきたうえに、環境中に残留しやすく分解されにくい性質を持つため、日本でも問題視されるようになりました。

また、PFASは放置していても自然に分解されない「永遠の化合物質」と呼ばれ、適切な除去を行わない限り自然界に残り続けます。完全にPFASを除去したい場合には、専門業者への委託が必要です。

PFASは、今後さらに規制が強化されていくと予想されます。

株式会社太陽油化では、PFAS処理に関するご相談は、ホームページより承っております。PFAS除去を専門業者に委託しようと考えている方は、ぜひ株式会社太陽油化までご連絡ください。

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